2024 年 20 巻 p. 35-40
ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid: DHA)とエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid: EPA)はω-3不飽和脂肪酸であり,抗血栓作用,心血管疾患の予防,血中の中性脂肪や総コレステロール値を減少させる効果などが報告されている.一方,骨代謝への効果については不明な点が多い.本稿では,DHAとEPAの骨への作用に着目し,炎症性骨吸収への作用について検討した.破骨細胞形成系である骨芽細胞と骨髄細胞の共存培養系において,DHAおよびEPAは破骨細胞分化を阻害した.骨芽細胞培養系において,DHAおよびEPAは炎症性メディエーターであるプロスタグランジンE2(PGE2)の産生と破骨細胞分化誘導因子であるRANKL(receptor activator of nuclear factor-κB Ligand)の遺伝子発現を抑制した.マクロファージ細胞株Raw264.7細胞を用いた破骨細胞分化系において,DHA,EPAはRANKL誘導性の破骨細胞の分化を抑制し,破骨細胞分化マーカー遺伝子であるカテプシンK,Clc-7のmRNA発現を抑制した.その作用機序としてDHAとEPAはNF-κBのリン酸化を抑制することが明らかとなった.本総説ではこれらDHAとEPAの骨代謝調節作用の最近の知見を概説する.