2024 年 20 巻 p. 29-34
細胞外マトリックス(extracellular matrix: ECM)は細胞の物理的な足場としての機能のほか,組織の形態形成,分化,恒常性維持にも必要な成分である.マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloprotease: MMP)はECM成分を切断することで,組織の恒常性維持に機能する.特に,皮膚では傷の創傷治癒過程でのECMリモデリングや血管新生過程への寄与が知られている.がん細胞の細胞浸潤過程においてもMMPの機能が重要な機能を果たしている.近年,老化細胞が特徴的に分泌するSASP(senescence-associated secretory phonotype)因子が慢性炎症を引き起こし,老化細胞の全身性の影響がわかってきた.SASPにはMMP群が多数含まれることが明らかとなり,老化過程におけるMMPの役割が再認識されている.本総説では,MMPから見た老化や老化関連疾患について概説するとともに,著者らが解析している老化モデルマウスの皮膚および様々な組織老化におけるMMPの寄与についても紹介する.