Functional Food Research
Online ISSN : 2434-3048
Print ISSN : 2432-3357
総説
加重力および微小重力環境下の運動によるマウス筋骨格系への影響
稲田 全規
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ジャーナル オープンアクセス

2024 年 20 巻 p. 5-10

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抄録

宇宙や地上の不動状態は廃用性の筋萎縮ならびに骨破壊を引き起こす.廃用性疾患を回避し,筋骨格系を維持するには,運動による力学的な負荷が有効である.本稿では,これら事象を定量的に解析するために,重力を変化させた運動環境下におけるマウスの筋骨格系の変化を解析した結果を中心に概説する.地上実験における通常重力(1G)と遠心飼育装置による加重力(2G),宇宙ステーション(ISSきぼう)における微小重力(µG)と遠心飼育装置を用いた人工1G重力(AG)環境下における宇宙飼育マウスの解析を行い,自由運動を伴った飼育下における加重力および微小重力環境による筋骨格系組織への影響を検討した.これら検討により,加重力および微小重力環境下の運動は筋骨格系の量的な維持において正と負の変化に相関した影響を示すことが明らかとなり,適切な重力負荷を伴った運動は筋骨格系の制御を正に導くことが示唆された. 最近,廃用性疾患は,運動器のみならず,感覚器や脳神経への種々の連鎖を生じることから,適切な運動負荷による認知症予防への重要性も明らかとなってきている.本総説では,超高齢社会の到来により増加が懸念される,老化と不動による不活動を起因とする廃用性疾患の予防を目的とした力学的な運動器制御について最新の知見を概説する.

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