2024 年 20 巻 p. 55-61
本研究では,中医学に基づいた食物の性質(温・熱・寒・涼・平)が冷えに及ぼす影響を明らかにすることを目的として交差試験を実施した.研究期間は,2021年4月から2021年7月とした.寺澤の冷え症診断基準(1987年)により冷え症と診断された女子大学生15人(年齢19〜26歳)を対象とし,このうち朝食として週に4日以上パンを摂食している8人をA群,米飯を摂食している7人をB群として2群に分けた.被験食品は食パン(小麦:涼性)および赤飯(もち米:温性)とした.対象者は体組成の測定を行うとともに,被験食品をそれぞれ2週間ずつ朝食に摂取した.各被験食品の摂取前日および摂取2週間の最終日に血圧,腋窩温度の測定および冷水負荷試験(手指)を行った.結果の集計および解析はSPSS(Ver.27)を用いて行った. 体組成は2群間で差がなかった.食事介入前のA群とB群の比較では,B群の腋窩温度が有意に高く(p < 0.05),朝食に米飯を摂取していると体温を高く維持できる可能性が示唆された. A群では,食パン摂取前後の皮膚温度回復率,血圧,体温等の変化に関する影響は認められなかったが,赤飯を2週間摂取したところ,摂取前と比較して腋窩温度が有意に上昇した(p < 0.05).B群では,被験食品の摂取前後において変化の認められた項目はなかった.これらの結果から,普段から朝食にパンを食べている者が赤飯を摂取すると腋窩温度が高まり,中医学に基づく食性が冷え症の改善に影響を及ぼす可能性が示唆された.