1988 年 44 巻 2 号 p. 64-71
201°Cのグリセリン中で種々の時間熱処理したナイロン66と,種々の処理を施したナイロン66の静的力学的性質を熱機械分析(TMA)および熱応力-ひずみ分析(TSA)によって測定し,それらの動的力学的性質と比較検討した。厳しい条件下で熱処理された試料は融点以上においてもその形状を保ち応力も担うようになる。架橋を導入された試料は十分熱処理された試料とよく似た性質を示すこと,一方,加水分解された試料は熱処理試料より退化した性質を示す。従って,十分に熱処理された試料は熱処理中に熱劣化を伴いながら容易にゲル化すると推定される。熱処理や加水分解あるいは架橋化された試料では動的損失におけるα'分散ピークがしばしば低温側にもう一つ現われた。この二つのピークは非晶部の二つの異なった領域,すなわち分子鎖が局部的な規則性を示す部分と,不規則性の導入のために乱雑になった部分とにそれぞれ対応させることができた。