2023 年 52 巻 2 号 p. 103-121
日本のタカハヤの集団構造を明らかにするため、mtDNA シーケンス分析による集団遺伝学的解析を行った。71標本群499個体について mtDNA cytochrome b 領域 3’末端側の506 bp の塩基配列を調べ、187種類のハプロタイプを決定した。その結果、日本のタカハヤ集団は、大きく2つのグループ(Group I と Group II)に分化し、グループ内でも Group I で2つ(Subgroup A, B)、Group II で5つ(Subgroup C~G)のサブグループを形成していた。グループ間の FST の平均値は0.755、各グループ間の塩基置換率の平均値は5.5%であり、遺伝的多様性および地理的分化レベルは高かった。Aグループは鳥取以西から九州に分布していた。Bグループは四国の太平洋側に、Cグループは徳島県・和歌山県・兵庫県を中心とした紀伊水道~東瀬戸内海の内海沿いに分布していた。Dグループの出現は九頭竜川のみであった。Eグループは、伊勢湾周辺域と静岡県中西部で出現した。Fグループの出現は、主に愛知県から富山県までにかけて南北であった。Gグループは琵琶湖で出現し、愛知県の矢作川は在来の可能性があった。各グループ間の分岐年代と日本における過去の地理的事象との関係性が示唆された。多摩川・新崎川と山形県に分布する本種は、琵琶湖流入河川のサンプルと遺伝的に近縁となり、琵琶湖からの侵入の可能性が高いと考えられた。