抄録
市町村森林行政について議論するため、アンケート調査による面的把握と複数の自治体を事例に施策分析をおこなった。2018年度の市町村アンケート調査から、多くの市町村では林務体制は小規模で、専門性を持たない職員が担っている実態が確認された。近年の地方分権化に対しては消極的な意見が多かったが、独自計画の策定や常設の委員会の設置の動きが広がっているなど、一部自治体において変化の兆しが見られた。また、2010年代に独自施策を展開する5自治体6施策を事例に施策のプロセス分析を行った結果、施策形成タイプとして、施策の内容検討を委員会で行う委員会型、自治体の実務職員が施策を具体化する実務職員型、民間企業に検討を委ねる民間活用型の3つに区分できた。主体の協力関係が最も良好に発揮されるように3つのタイプが形成されており、また、キーパーソンはそれぞれの強みを活かして施策に貢献していた。これらにより、国から独立した形での市町村の主体的取り組みが、2010年代にはより多様な地域課題に対応し、施策の質と実効性を高めながら地理的にも広がって展開される段階に入ってきたことが示唆された。