抄録
幕藩体制の最大の特徴は、「集権的ガバンス」と「分権的ガバナンス」が対立的に併存するのではなく、相互に補完的な存在だったことにある。とりわけ、貢納システムは本来、「集権的ガバナンス」による統治の代表的なものであるが、村役人の手を通す中で次第に「村のガバナンス」に移行することになった。幕府からみれば、村役人による統治だったかもしれないが、村方からみれば自分たちの統治するガバナンスの中で廻っていた。「石高制」という少し緩やかな制度(社会的ルール)の中で、領主と村方は対立する局面よりも双方のメリットを生かした形で徳川260年を過ごした。村方のガバナンスを垣間見ることが出来るのは「名寄帳」であり、今では、貴重な近世文書となっている。