入会林野研究
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鳥羽市菅島地区入会権訴訟の控訴審判決
令和5年7月26日名古屋高等裁判所判決
伊藤 裕
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2024 年 44 巻 p. 52-65

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抄録
鳥羽市菅島の採石地の所有権をめぐる「土地総有権等確認訴訟」で、名古屋高等裁判所は令和5年7月26日、菅島町内会(原告、控訴人)の主張を認め、「控訴人が共有の性質を有する入会権を有することを確認する」との判決を下した。本稿は、この名古屋高等裁判所の判決(以下、「控訴審判決」という。)を紹介し、なぜ一審判決が覆ったのか、共有的入会権の成立を認めた論理はどのようなものであったのかを明らかにしようとするものである。控訴審判決は、大正2年払下げから昭和29年合併までの間については、採石事業の展開によって所有(共有)権的な性質が強まったということはできるとしながらも、共有的入会権の成立は認めなかった。しかし、昭和29年合併後について、控訴人の主張する昭和29年10月10日時効取得の成立を認めた。取得時効の成立要件である占有の継続と自主占有を、一審判決は共に否定していたが、控訴審判決は、採石による占有を認め、山林譲渡合意の評価によって自主占有への転換も認め、時効取得が成立するとした。被控訴人があげる何点かの他主占有事情の主張も、すべて明快な論理で否定した。控訴審判決が時効取得を認めた最大のポイントは、「志摩郡菅島村長事務引継書」と、昭和48年3月、同49年3月の被控訴人の内部決裁文書の認定である。控訴審判決は、極めて精細正確な事実認定によって、本件紛争の本質を見極め、正当な判断をしたものと評価する。
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© 2024 本論文著者

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