抄録
過剰Cu処理された当年生クロマツ苗の植物体各部のCu濃度経時変化,ならびに,使用ポット内0.1N HCl可溶の可給態土壌Cu濃度経時変化を調べた。土壌に処理されたCuCl2溶液の濃度は0, 40, 120, 260, 430ppmであった。その結果の概要は,
1)土壌Cu濃度の経時変化は,片対数グラフで直線となる指数関係であらわされ,高濃度処理の土壌程,濃度低下の傾きが急である。
2)Cu処理を施していない植物体(処理1)各部位のCu濃度は,季節によってかなりの変動を示すが,一般的には,生育初期あるいは形成期に高く,生育の盛んな時期に低下し,生育後期に再びいくらか高くなる傾向がみられる。各部位別の濃度は,それぞれが生育期間を通じて一定の濃度変動幅をもっているが,冬芽>根>胚軸>上胚軸・葉の順の濃度傾向がみられる。枯葉は上胚軸及び葉より明らかに高い値を示すが,濃度変動が激しい。
3)過剰Cuの添加により,高濃度処理区では,根>冬芽>上胚軸>胚軸>枯葉>葉の順に濃度が高くなる。すなわち,植物体にとってCuの取り入れ口である根,それに地上部では非同化部分の新生部位である冬芽,上胚軸は低濃度処理でも処理差は歴然としている。それに対し,胚軸,枯葉,葉は根のCu濃度が300ppmを越えた高濃度処理でCu処理の影響が顕在化する。
4)葉のCu濃度に対し枯葉のCu濃度がいくらか高いが,これは生育初期のCu濃度の高い子葉および初生葉が枯れた結果と思われる。また,Cuの添加による葉のCu濃度の上昇は少なく,せいぜい30ppm程度であるが,枯葉は100ppmを越えることもある。葉の過剰Cuに対する反応として高濃度Cuを含む葉を落葉という形で体内から離脱させ,Cuを排泄させる作用が考えられる。
5)冬芽,上胚軸では,低濃度処理から,濃度の上昇がみられたが,このような部位における濃度上昇は次年度の生長低下を予測させる。