2003 年 2 巻 p. 111-144
環境保全と木材貿易の問題がWTOの会議などで取り上げられ、計量分析に基づく議論が行われている。本研究の目的は、世界貿易モデルの構築を念頭に、その基礎となる日本、アジア開発途上地域、北米、中米、南米、東欧、西欧、オセアニア、ロシア、アフリカの10地域における産業用丸太、製材、木質パネル、チップ&パーティクルついての輸出入に関する需要、供給両関数の推定にある。使用データは1970~1999年の30年間の年次データである。分析では、データの非定常性の検定を行いつつ、両対数線形モデルを用いて普通最小二乗法(OLS)、二段階最小二乗法(2SLS)、三段階最小二乗法(3SLS)による係数推定を試みた。更に、経済現象の動的調整過程をみることが出来るアーモンラグモデルによる推定も試みた。分析の結果、OLSの推定結果に対し理論的な価格の符号条件が満足されない場合、他の推定方法を試みても推定に改良が得られないことが分かった。特に供給関数の推定結果が全般によい結果を得ていない。しかしながら、輸出入量の著しい増大期または減少期には、価格弾性値が弾力的な値を示す傾向があった。