1本のヒノキの枝と葉の関係を求めた。枝元径bは枝の長さBの約1%であった。Bbを枝の広さと呼び、葉重量cとの間にBb/c=2cm2/gの関係があった。また梢端から枝の位置までの距離lによるB/l=15~60cm/mの関係があり、Bには上限があった。この上限の影響範囲外で葉重量cの密度(g/m)は lに比例し、葉は円錐形の樹冠表面に分布すると想定された。このような葉と枝の関係を幹にも求めると、樹幹上方を除いた範囲において諸変数により樹幹形が表現された。これらの結果からヒノキの形状モデルが作成された。
目標計画法により多様な森林機能間の調整を行うには、各機能の持つ情報の質の違いが問題となる。情報の質の違いとは、情報が定量的であるか否かで、本報ではそれぞれを定量的情報、定性的情報とした。定性的情報は、目標計画法により流域管理計画を作成する際、定式化が困難である。そこで、定性的情報を持つ森林機能をランドスケープの概念で整理することにより、多様な森林機能を目標計画法に組み入れることが出来るようになった。また、この方法を知床半島岩尾別川流域に適用した事例を紹介した。
森林土壌中に存在する根現存量の推定、および根現存量を規定している要因の解明のために、根現存量に関する既往の実測データを利用し、根現存量と各要因との関係を解析した。その結果、樹種、林齢のような林況と母材のような立地要因が根現存量を規定していることが明らかとなった。一方、林野土壌の分類に基づいた土壌型や地域による根現存量への影響は小さかった。また、根現存量の試算により、樹木根系が貯留している炭素量は、地上部や堆積有機物、土壌が貯留している炭素量と比べても、決して少なくなく、重要な炭素貯留源であることが示された。
住宅需要の変化に伴い、木材に対して強度や形状の安定性が求められるようになり、乾燥材や集成材へのニーズが高まっている。しかし、欧州などからの集成材の輸入が急増する一方で、乾燥費用の負担の問題から国内の乾燥材生産量は製材品の1割程度に留まっている。本研究では、既往研究及び聞き取り調査による情報に基づき乾燥材生産に対する経営プロトタイプモデルの構築を行い、持続的な生産に対する経営分析を行った。分析対象は、乾燥が難しいとされるスギを中心とし、加えて他の樹種についても検討した。分析の結果、持続的に乾燥材生産を実現するには、費用削減などの単独項目の効率化だけでは不十分であることが分かった。小規模工場が多い我が国では、現在ある製材工場に乾燥設備の導入をしても投資効果が発揮されず、採算が合わない結果となった。生産の効率性を向上するには、製品の多様化が必要不可欠であることが示唆された。
45年間の日本の木材需要動向を見ると、木材全体そして用材共に1973年最大値を示し、その後減少している。パルプ・チップ用用材は他の需要量と異なり1995年まで増加したが、その後減少傾向にある。日本の経済指標との関連を検討すると、パルプ・チップ用用材のみ相関関係が見られるが、他の木材需要量は関連性が見られなかった。木材を有効利用するために、木材の「消費」とは何かから考え、木材流通概念を拡大し変更した上で、木材の消費者ニーズを引き出すマーケティング手法導入が必要であることがわかった。
環境保全と木材貿易の問題がWTOの会議などで取り上げられ、計量分析に基づく議論が行われている。本研究の目的は、世界貿易モデルの構築を念頭に、その基礎となる日本、アジア開発途上地域、北米、中米、南米、東欧、西欧、オセアニア、ロシア、アフリカの10地域における産業用丸太、製材、木質パネル、チップ&パーティクルついての輸出入に関する需要、供給両関数の推定にある。使用データは1970~1999年の30年間の年次データである。分析では、データの非定常性の検定を行いつつ、両対数線形モデルを用いて普通最小二乗法(OLS)、二段階最小二乗法(2SLS)、三段階最小二乗法(3SLS)による係数推定を試みた。更に、経済現象の動的調整過程をみることが出来るアーモンラグモデルによる推定も試みた。分析の結果、OLSの推定結果に対し理論的な価格の符号条件が満足されない場合、他の推定方法を試みても推定に改良が得られないことが分かった。特に供給関数の推定結果が全般によい結果を得ていない。しかしながら、輸出入量の著しい増大期または減少期には、価格弾性値が弾力的な値を示す傾向があった。
木材需給均衡モデルは国産材需給量の推移を予測するためのもので、本研究ではこのモデルへ拡張減反率を適用し経済要因の変化を減反率分布へ反映するための方法を考察した。その結果、拡張減反率に固有の経済林の概念を回避するには成長関数g(t)として、g(0)=0かつt→∞でg(t)→∞なるものを選ぶ必要があることがわかり、そのような要件を満たすg(t)として正の線形トレンドを有する木材価格モデルを仮定した。さらにg(t)を時系列モデルとして記述した際のパラメータを推定する方法を考察した。
森林資源構成表から減反率を推定する場合、データに含まれる打ち切りや切断を明らかにし、それに基づいて、減反率を最尤推定する方法を紹介し、また、既存の方法のうち、鈴木の方法、Blandonの方法を再評価した。Blandonの方法と新たな方法は打ち切りや切断に対応しており、良好なシミュレーション結果を示したが、鈴木の方法は問題を残した。また、減反率の推定が期首の齢級構成に依存するのは好ましくないとされてきたが、打ち切りや切断への対応がなされておれば、そのこと自体は問題ではないと考えられた。
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