本研究では幾何ブラウン運動と標準Mean-Reverting過程の特徴を利用した変形Mean-Reverting過程による丸太価格の確率モデル,及び離散型の確率動的計画法により林分経営のための最適確率制御モデルを構築した.ここで構築した最適確率制御モデルは林分経営において,「伐採-植林」,「伐採-放棄」,及び「伐採待ち」行動の3つに対する最適選択問題であり,間伐などの中間的な行動は考慮していない.また,林分材積成長には不確実性を考慮せず,九州地域の林分密度管理図及び標準育林体系によった.1975年~2000年までの月次スギ丸太価格時系列データを用いて,確率モデルのパラメータ推定期間を様々に変え分析した結果,変形Mean-Reverting過程のパフォーマンスが最も良かった推定期間は1980年 9 月~1991年 4 月,その時の平均的に収斂する値が2万6千円付近であることが分かった.また,得られる最適伐期齢については,初期価格がこの値より低ければ,漸近的に常に価格が上昇する期待があり,最適伐期齢が限りなく延期される結果となることがわかった.逆に,この値を上回る場合,初期価格と収斂する値との差により最適伐期齢が異なるものの,初期価格が収斂する値に近づくに従い,最適伐期齢は長くなることがわかった.すなわち,森林所有者が期待する将来的な収斂値に木材価格が近づくに従い,伐期齢の延期が観察されるという結果になる.