2009 年 8 巻 p. 1-12
文化的・歴史的価値の高い木造建造物文化財を維持していくためには, 高品質な大径長尺材の確保が必要である. しかしこのような資材の確保は, 経験的な基準によって行われてきたため, 補修が必要な際, 効率よく確保できていない現状がある. そこで木造建造物に適用できる資材の基準を明らかにすることが重要である. 本研究では, 補修用資材として需要の多いヒノキを対象とし, 木造建造物に使用されている原木の規格, さらに立木の規格を評価する手法を検討した. この結果, 辺材幅の実測値を用いて, 製材品規格の要求に応えることのできる原木規格が得られた. そして木曽の天然ヒノキ林で調査を行い, 樹高曲線式と相対幹曲線式を作成し, これらの式より要求されている規格の原木が得られる立木の樹高と胸高直径を推定した. さらに文化財の構成部材の具体的な情報から, その部材を得るための立木の胸高直径を推定することができた.