2010 年 9 巻 p. 71-87
富山県西部の森林にはカワイダニスギと呼ばれるスギ品種が多く植えられており, これらは2004 年の台風23 号で甚大な被害を受けた. このスギ林木の風害の発生機構を検討するために「片持ち梁」理論に基づく林木の力学的モデルを構築した. モデルの構築に必要な樹幹形や樹幹ヤング率などの資料を富山県西部のカワイダニスギ林から収集した. 根返りモーメントは県内の3箇所のスギ林で測定した. このモデルに林木のサイズをインプットして, その木が根返りまたは幹折れのどちらの被害タイプを示すのかを推定した. このモデルの適合性を検討するため, カワイダニスギのサイズや被害タイプを調べた. 推定結果と観察結果とを比較したところ, 幹折れの正解率は高かったが, 根返りのそれは低かった. 幹折れの高さは推定値と観察値がほぼ一致した. 胸高直径が同じであれば樹高の高い林木は幹折れを, 低い林木は根返りを生じる傾向が認められた.