日本理科教育学会研究紀要
Online ISSN : 2433-0140
Print ISSN : 0389-9039
中等教育段階における総合理科 ―日本と英国を中心として―
ラーマン マハブル
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 21 巻 2 号 p. 59-68

詳細
抄録

本研究の目的は,日本と英国における総合理科カリキュラムの目的と内容の具体的な試みを明らかにすることである。日本において, 1930年代に,一般理科という総合的な理科カリキュラムが中学校に導入されたが,それは,実質的には総合理科の理念とは,遠くかけ離れたものであった。第二次世界大戦後,生活理科が広く普及したが,これは,原理的には総合理科の色彩を顕著に持つものであった。そして現在,日本の理科教育では,高校に総合理科的色彩の強い「理科 I」が設饂されたが,これは,まさしく生活中心主義的原理に立つ理科教育である。一方,英国では, 1936年以来一般理科が成立した。そして, 1970年代に入ってから総合理科として多くのものが計画されたが,これらの総合理科プログラムは,一般にできるだけ多くの科学的な直接経験を生徒に得させるために生徒の能動的かつ注意深い活動を学習の基礎としており,そこでは,生徒に対する徹底的な探究的•発見的行動が求められている。英国では,理科カリキュラムの開発が自由に徹底的に行われるため,非常に特徴的な総合理科が開発されているが,それをどのように普及させるかに大きな問題がある。一方,日本の場合は,画ー的な実施という点から,思い切った総合理科プロゼクトを開発して実施することがむずかしい点で問題がある。しかし,いずれの国においても,その総合理科の目指すところは,本質的に同じ方向を向いているといえる。

著者関連情報
© 1981 一般社団法人日本理科教育学会
前の記事
feedback
Top