日本理科教育学会研究紀要
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電気概念を育てる指導過程の研究 ―電気概念認識の実態と新しい電気教具―
井野口 弘治上総 平松浦 立義直木 和郎結城 毅八郎岡本 淳近藤 精一
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1982 年 22 巻 3 号 p. 1-7

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抄録

エネルギーを認識する上で非常に重要であるエネルギーの量的保存の児童生徒の認識の発達は極めて低い。その原因はエネルギーの諸形態の認識が不足していることにある。その中でも,特に認識が困難であると思われる電気概念をとりあげ,児童生徒の認識の実態について研究を行った。その結果,現行小中学校のカリキュラムに基づいた電気概念の学習は困難であり,電気を物質として認識する者が多かったのに対し,静電気は,生活経験から,感覚的にエネルギー的に認識する者の多いことが明らかになった。故に,エネルギー概念獲得に必要な電気のカリキュラムは,静電気の学習を基礎とすることが妥当である。これらの考察から,静電気に関する児童生徒の日常経験を生かし,また容易に操作でき,且つ,できるだけ定量的な実験を可能にする教具として,摩擦型静電気発生装置と,それを利用する静電引力斥力実験器•発光現象観察装置•平板コンデンサーと火花放電実験器•電気力線観察装置などの開発に成功した。これらの教具によって,正負の電気の存在・100V交流との類似性や同一性・電気量と電圧の概念•発生する電気量と仕事の関係などを容易に認識することができると考えられる。

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© 1982 一般社団法人日本理科教育学会
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