日本理科教育学会研究紀要
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「系概念」の形成に関する研究 (I) ―高等学校「理科I」における概念形成場面についての実践的検討―
池田 俊夫
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1982 年 23 巻 2 号 p. 37-46

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抄録

自然界を総合的に理解するためには,「相互に作用し依存しながら,多くの構成要素が全体として一つのまとまりを作りつつ常に動的平衡を保っている」という,自然を一つの閉じた「系」として考える「系概念」の体得が必要である。新しい高等学校「理科I」のねらいもここにある。筆者は,このような「系概念」を高等学校「理科 I」の学習内容の中で生徒がどのように認識しているかを探るため「系概念」に対する一つの見方を提唱して,「水」を核にした新しいカリキュラムの開発を行い,さらに試行的授業を実施して,その前後の認識の変容度を調査研究した。その結果,以下の事項が明らかになった。(1)学習索材にとりあげた「びわ湖」を,生態系を視点にして一つの「系」という見方で理解し認識する学習者の数の増加が見られた。(2) 環境保全,自然回復の将来の見通しは暗いと予想する生徒が増大しているが,このことは不十分ではあるが自然を一つの「系」として理解し認識した結果である。(3) 社会に生じる環境問題について,直接的に短絡的に思考する生徒が多く,総合的にみる見方・考え方の育成がいまだ十分ではない。(4) 「自然とは何か」,「自然をどうみるか」という,高校生らしい素朴な自然観や価値観を正しく身につけさせる必要がある。

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© 1982 一般社団法人日本理科教育学会
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