1983 年 23 巻 3 号 p. 91-99
第1, 2報で紹介したProject Synthesisの中の「科学,技術及び社会との関連性を志向した中等理科カリキュラム研究グループ(略称 STSグループ)」の研究成果について論ずる。'80年代のアメリカの中等理科教育の主要目標は,教育内容として,科学,技術及び社会との関連性を図るということにある。そこで, STSグループは, 適切な教育内容を選択するために, 目標分析を行なった。その手順は以下の三つの過程から構成されている。(1) 生徒の望ましい状態の定義 第 1目標群から第 4目標群に分けて分析されている。第 1, 第 2は,エネルギー,人口,人間工学,環境の質,天然資源の有効利用,宇宙開発と国防,科学の社会学,科学技術の発展の影響という八つの話題を中心にして分析が行なわれている。更に,第 3は,科学及び技術の基礎的知識・技能,科学的知識の変化,生涯教育という話題を,第 4は,職業選択の機会,職業選択における意志決定,科学に対する全体論的見方という話題を中心にして分析が行なわれている。(2) 科学技術と社会との関連性に関する理科教育の実態 従来の教科・科目を中心にした理科教育が大勢を占め,(1)の目標に関る教育は皆無に近かった。(3) STSグループの目標達成のための提言 提言の主な内容は, STS関連カリキュラムの開発,このカリキュラムを教授可能な教員養成及び現職教育,国立のSTS研究センターの設置等である。