日本理科教育学会研究紀要
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理科におけるプロセス・スキル習得の指導法に関する一考察 ―地質教材フィールドワークに関して―
荒井 豊
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1983 年 23 巻 3 号 p. 101-108

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抄録

本論文は,児童生徒にプロセス・スキル(科学の要素的技法)を効果的に習得させる一指導法の研究である。まず,教育現場の実践経験と自然事象の地質学的研究による帰納的手段と関連文献研究にもとづいて,本研究の基盤となる指導理念を構築し,その具体的試案(①地質教材フィールドワークのプロセス・スキル構造図,②プロセス・スキル構造のカリキュラム模式図,③地質教材における主な観察基準表)を仮説として作成した。そして,その具体的試案を,中学2年生を対象に野外の地層観察授業を実践することによって検証した。検証により,次の諸点が明らかになった。(1) 具体的試案(①, ②,③)から野外の地層観察授業に関する設計((i)指導計画,(ii)目標の設定,(iii)評価方法など)が,容易にできた。(2) 地層観察授業時の活動状況や授業結果の評価資料等から,生徒達は,プロセス・スキル習得という目標を達成することができたと判断できる。その結果,次の結論を得た。(1) 仮説とした具体的試案(①, ②,③)は,検証された(1)と(2)の事実から児童生徒にプロセス・スキルを効果的に習得させる具体的な指導プランとして,妥当性のあるものと判断できる。(2) したがって, 仮説とした本研究の基盤となる指導理念,すなわちAAAS理科と初等理科ESSのそれぞれの長所を生かした中間的指導理念によるプロセス・スキルを習得させるための指導法は,学習者にとっても,指導者にとっても有効であることがわかった。

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© 1983 一般社団法人日本理科教育学会
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