日本理科教育学会研究紀要
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認識の形成過程をさぐる ―「慣性の法則と力」を例に―
滝川 洋二
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1983 年 24 巻 2 号 p. 19-26

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抄録

教授学習過程の記録を分析して科学的認識の形成過程を把握し,それが授業にどのように役立つかを明らかにする。そこではおよそ,(1)教師による課題発問にたいして,(2)生徒が予想と自分の考えをノートに書くところから出発し,(3)意見発表と討論を経た上で,(4)適当な実験を行い,(5)生徒がその結果のまとめとそれにたいする考察とをノートする,という手順に従い,高校生を対象として,力学の法則,とくに慣性の法則を理解し,それにかかわる範囲内で力の概念をどのように捉えることができるかを論じた。その結果として,(1) 物体に外力が加わっていてもその合力が0である場合について考察することにより,慣性の法則がいっそう捉えやすくなること(2) 生徒が「もらった力」とか「前に進もうとする力」とか表現する,いわゆる「勢い」は,外力とは違う概念であることを明瞭にすることが大切であること(3)また一般に,考察を進めるにあたって生徒自身の言語表現が重要な役割を示すことなどが明らかにされる。

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© 1983 一般社団法人日本理科教育学会
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