日本理科教育学会研究紀要
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児童・生徒の空間認識に関する考察(Ⅲ) ―視点移動の類型化について―
松森 靖夫
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1983 年 24 巻 2 号 p. 27-35

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抄録

視点を移動し自分以外の立場から,自然の事物現象を捉えることは,大変重要な空問認識能力の一つである。本稿では,まず理科教育学及び心理学における視点移動理論を概観した。それらに基づき,視点移動の機能的特質から,次の4タイプを抽出した。・タイプIA (具体的かつ能動的視点移動) :学習者が能動的に空間を移動し,そこからのながめを知覚するタイプ ・タイプIB (具体的かつ受動的視点移動) :認識対象物が空間を移動する。学習者が移動後のながめを受動的に知覚するタイプ。学習者は認識対象物と相対的に視点移動したことになる。 ・タイプⅡA (心的かつ能動的視点移動) :学習者が能動的に心的移動をし,そこからのながめをイメージするタイプ ・タイプⅡB (心的かつ受動的視点移動) :認識対象物の移動を想定し,移動後のながめを受動的にイメージするタイプ 次に,小1における左右認識能力と視点移動の関連性について調査した。その結果,視点移動の認知機能的階層(IB→ IA→ ⅡA・ⅡB)が明らかになった。また,諸外国の理科カリキュラムに比べ,我国の方向学習には系統性が欠如していることがわかった。

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© 1983 一般社団法人日本理科教育学会
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