日本理科教育学会研究紀要
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Print ISSN : 0389-9039
試料の温度をはかる比熱の測定法
高橋 成和
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1984 年 25 巻 1 号 p. 37-42

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抄録

高等学校理科Iにおける「比熱」の学習は,熱エネルギーの概念,熱量の保存にかかわると同時に,物質の熱的な基本的性質を認識することにある。このことを生徒が確実かつ具体的に学べるように,金属の比熱を測定する実験が教科書に取り入れられている。その方法は,金属試料と水との混合による水温変化を測定するものである。本論文は,この形式をかえて,金属の温度変化を計測する方法を述べる。ここで用いる試料はガラス管をつけた金属円柱で,温度測定はこの管を通して金属に差し入れる棒状温度計で行う。円柱は銅,鉄,鉛,アルミニウムで作り,直径が3cm,高さ2, 3, 4, 5, 6cmであり,ガラス管は直径1cm,長さ15cmである。これらの試料(金属円柱+ガラス管)と水(250g)の,「質量の比」に対する「混合による温度変化の比」についてのグラフの傾きが比熱を表すが,この値は文献値とよい一致をみた。この実験を比熱測定だけに留めることなく,試料に付随するガラス管と温度計が出す熱量について,あるいは4種の金属の比熱の違いから原子比熱を導くことについて考察することへと発展させれば,教職を目差す学生の教育にも有効である。

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© 1984 一般社団法人日本理科教育学会
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