金属の酸化や金属酸化物の還元の学習は,中学校における化学変化の概念形成に重要な教材であり,中学校学習指導要領理科第一分野(3)物質と原子,イ 化学反応(ア),(イ)の質量保存の法則,定比例の法則の中心教材として位置づけられている。金属の酸化については,「閉じた系内における金属の燃焼実験装置」を開発したので,金属酸化物の還元についても,閉じた系内(水素中)で爆発の危険性が全くなく,操作が簡単で生徒実験として行わせることのできる実験装置の開発のために本研究を行った。反応管(ガラス管)にポリ袋をつけ,その中に金属酸化物と水素だけの閉じた系を作り,温度コントロールと加熱範囲を拡大するために,ニクロム線を用いた発熱管で反応管の外部から加熱する本実験装置による還元実験を行ったところ,次の結果を得た。(1) 生徒実験用装置 ①黒色の酸化銅(II)が金属光沢をした銅に変化していく様子が観察でき,酸化銅(II)と銅の質量比CuO/Cuは実験誤差の範囲内で理論値である1.25を得た。②還元の進行と同時に,系内に水が生成されることが視覚でとらえられ,酸化銅(II)の重量減少分と水素の減少量分だけ系内で水ができることが,実験誤差の範囲内で検証できる。③定性的に水素の消費が確かめられる。④爆発の危険性が全くなく,操作が簡単である。(2) 演示実験用装置 ①酸化銅(II)以外の金属酸化物―SnO2, PbO, Pb3O4, Cu2O, Fe2O3―を還元することができる。
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