日本理科教育学会研究紀要
Online ISSN : 2433-0140
Print ISSN : 0389-9039
ソ連の中等科学教育における教科間の関連性 ―教授要目案の誌上審議における教科間結合―
山路 裕昭
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 26 巻 1 号 p. 41-47

詳細
抄録

1978年に発表された自然科学系教科の教授要目案の誌上審議においては,教科間結合に関するさま ざまな意見が提出された。誌上審議全体を通して教科間結合そのものに対する否定的意見は見られず,また総括論文では教科間結合が肯定的評価を得たとされていた。多くの意見では,教科間結合の陶冶と訓育の両面にわたる 機能が指摘されていた。これらの意見は,まさに教授要目の改訂と教科間結合の導入が全般的義務制 中等教育の条件下でその訓育と教授・学習の質的向上を計る目的で行われたことの反映と考えられる。 しかしながら同時に,誌上審議においては,教授要目案における教科問結合の具体的指示に関して, さまざまな修正や補足の提案が行われ,また隣接教科の範囲の不明確さや教科内結合などの取り扱い に関する問題なども指摘されている。これらの提案や問題は,教科間結合の実現に対する統一的態度 や基準が明らかにされていないことを意味するとともに,教科間結合を教授要目へ導入することの困 難さを意味していると言えよう。 したがって,教科間結合に対する肯定的評価は,教授要目案における教科間結合の指示に対するも のと言うよりも,むしろ教授要目案に教科間結合が導入されたことに対するものであり,教科間結合 そのものに対する肯定的評価と考えられる。 さらに,教科問結合そのものに対する肯定的評価と同時に教授要目案における具体的指示に関して さまざまに異なる意見が出されたことは,さまざまな形態や方法を持ち,多様な実践の中で育まれ, そしてその有用性を認められてきたという教科間結合そのものの性格を反映したものと考えることが できる。

著者関連情報
© 1985 一般社団法人日本理科教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top