障害児の理科教育は,その教育手段がまだ明確なものとはなっていない。しかし,実際の教育現場において,障害児の理科教育は,とらえ方を変えれば,教育前(レディネス段階)の児童にも適応できる性格を持っていると思われる。その為,障害児にとって理科教育とは,将来生活してゆく為の必須科目という解釈も可能となろう。そこで,障害児教育における理科教育の重要性に鑑み,その実態を知る必要がある。まず,障害児の理科的知識を質問紙法によるテストを用いて調査し,その理解度を種々の方法により分析する。その結果,得点は,発達年齢の中でも,認知より社会に強い相関を示すことがわかった。また,各分野については,高得点を取ると思われた生物は,それほどでもなかった。一般に,健常者の場合,得点は,認知に依存するといわれている。しかし,結果より,障害児の理科的な知識は,それと異なり社会(言語)に依存することが多いと思われる。これらのことにより,個々の症例について検討した結果,全般的に認知面のおくれに比べ,それより高い抽象的概念的な思考の取り組みをおこなっていることが,原因していると考えられる。その為,具体物を用いて学習したり,教師や他児との相互交渉をより多く持つような授業をこころがけるべきであろう。本法は,理科教育のみならず他教科についても同様の取り組みが可能であり,肢体不自由の教育現楊における実態把握により適合した手段と考えられる。