日本理科教育学会研究紀要
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静電誘導現象を利用した実験用発電装置の製作
田口 功
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1985 年 26 巻 2 号 p. 53-58

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抄録

中学校において"帯電体どうしは空間を隔てて互いに力を作用しあう”という事を理解し、力の量的な見方を養うという事を目標としてあげている。セルロイドの下敷をマフラーなどでこすると帯電し、紙や髪の毛をひきつけたり、軽い金属箔なども引きつける。つまり帯電した下敷は仕事をするためのエネルギーを持つ事になる。帯電体を作るには直流電圧を加えて電荷をためる方法、摩擦により静電気を発生させる方法などがある。最近ピストル型の静電気発生器などが考えられているが、構造が意外に複雑でありプラックボックス的になりやすい。やはり小学生の時下敷を髪でこすりその帯電したセルロイド製の帯電体を髪の毛につけて遊んだ経験を持っている人は多いと思われる。小学校、中学校を通じて身近な電気教具の中で静電気を利用した実験装置はほとんどみうけられない。本研究ではこの下敷をこする要領で静電気を発生させ、静電誘導現象を利用して、だれでも出来る簡単な電気教具を製作し、①摩擦電気を光のエネルギーに変換するための実験、②発光ダイオードを発光させる実験、③発生させる電圧の波形をオシロスコープを用いて観察する実験、④電磁誘導現象を発光ダイオードを利用して確かめる実験などを行なった。さらに工作用紙とアルミニウム箔を使用して身近に出来る円筒形の発電装置も作製した。この円筒形の発電装置を用いれば1個か2個の発光ダイオードを発光させることが出来る。この実験を通して静電気のエネルギーを光に変えたり、力に変えたり、さらに静電気エネルギーをフェライトを介して一度磁気エネルギーに変え、磁気エネルギーをコイルを通じて電気エネルギーに変換し、発光ダイオードを点灯させている。すなわち、電磁誘導現象の実験を行ない、エネルギー伝達実験をこころみると同時に本装置の電気の発生メカニズムの解析も行なってみた。

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© 1985 一般社団法人日本理科教育学会
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