小学校6年「電磁石」の単元で、鉄釘を磁心として、そのまわりにエナメル線を巻いた電磁石を使っている。教科書には、アルコールランプで赤くなるまで熱し、その後空冷した釘を使用するよう書かれている。これは釘に焼きなましという熱処理をしているものと考えられる。熱処理には消磁の効果があることが良く知られている。この焼きなましをした釘は確かに磁気を示さない。しかしこれを電磁石の磁心とし、コイルに電流を流し磁化すると、電流を切った後も磁気を示す。磁気を消すためには再び焼きなましをせねばならない。これでは何のために焼きなましをせねばならないのか、筆者らは長く疑問としてきた。今回この焼きなましの効果を調べるため、アルコールランプ、ガスバーナー、電気炉を使用して焼きなましを行ない、磁気の残留状態を比較した。定量的にするため、筆者らがすでに報告しているヒステリシス曲線 (I- B図)と、電流と吸引力の関係(I-F図)とを測定して詳しく調べた。1000℃の電気炉で処理した釘は、残留磁束密度が0となった。これは電流を切った時磁気がなくなることを意味する。また、他の方法での処理の結果から、焼きなまし温度について検討した結果を報告する。