日本理科教育学会研究紀要
Online ISSN : 2433-0140
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27 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 森 一夫, 家野 等, 久岡 裕美
    1986 年27 巻1 号 p. 1-8
    発行日: 1986年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    本報では、児童・一人ひとりが問題意識を明確に把握したうえで、役割を分担し合うことによって協働して学習活動を行い、その成果を互いに共有し得るような小集団による探究活動を実施した。その結果、このような小集団で児童が助け合い、支え合いながら困難な問題に取り組む活動によって、次のような教育的効果をあげ得ることが明らかになった。(1)児童の人間関係、理科学習に対するモラール、および理科に対する好き嫌いの感情が好転する。(2)人間関係が改善されれば、子どもの自然認識(知識・理解)の獲得も向上する。(3) 理科学習活動に対するモラールが向上すれば、子どもの自然認識(知識・理解)の獲得も向上する。(4) 理科に対する好き嫌いの感情が好転すれば、子どもの自然認識(知識・理解)の獲得も向上する。

  • 松森 靖夫
    1986 年27 巻1 号 p. 9-18
    発行日: 1986年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    米国の教育誌 Science Educaticmには、1976年頃より現在まで「宇宙体系としての地球概念」に関する認識研究が多数掲載されている。また、これらの研究方法論の基盤には、J.Nussbaumらの開発した評価方法(面接法)がある。本研究では、このJ.Nussbaumらの評価方法に基づき、我が国の小3児童の「宇宙体系としての地球概念」に関する認識状態を調査した。そして次の結果を得た。1. J. Nussbaumらの評価方法、及び本概念に関する発逹モデルを用いて、我が国の児童(小3)の認識状態を円滑に記述・把握できた。2.本概念において、男女間の認識状態に有意な差はみられなかった。3.我が国の児童と諸外国の児章の認識状態には、有意な差があった。この要因として、文化・社会的環境・学校教育制度等の差異が考えられる。

  • 井頭 均
    1986 年27 巻1 号 p. 19-22
    発行日: 1986年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    重さが同じで大きさの異なる二つの物体を持ち比べたとき、我々には体積の大きい方が軽く、小さい方が重く感じられる。このような現象をシャルパンティエ効果(Charpentier's effect)あるいはSize-weight illusionと呼んでおり、成人から精神遅滞児に至るまで広く認められる。シャルパンティエ効果に関する研究は、すでに多くの人々によって成されているが、設定条件の重さが100g~200g程度の場合がほとんどで、しかもその多くは定性実験的な内容である。そこで本研究では、重さの範囲をもっと広げ、 150g • 500g • 1000gのボールを使ってシャルパンティエ効果を調べた。さらに実験方法を工夫することによって、この効果の大きさを定量測定することを試みた。この結果、シャルパンティエ効果は錯覚的な現象ではあるが、単に定性的にだけでなく定最的にも予測可能な現象であることが明らかとなった。

  • 池田 俊夫, 武藤 純
    1986 年27 巻1 号 p. 23-32
    発行日: 1986年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    従来より筆者らが述べてきたように、自然界を総合的に理解するためには「系概念」の体得が必要であり、高等学校「理科 I」の最大の課題でもある。今回、この「系概念」形成の過程を明らかにするために、京都市立紫野高等学校昭和60年度入学の新1年生、 449名(10学級)を対象に、 「中学校理科履習直後の生徒が「系概念」をどれほど理解し身につけているか」、 「「系概念」の意識化の程度はどれほどか」、さらに「「系概念」を礎にした総合的なものの見方・考え方の達成度はどれくらいか」を、客観的および記述式調査テストにて研究した。その結果、以下の事項が明らかになった。(1) 高等学校入学直後の新1年生が示す「系概念」の理解度は、解答項に示されたとおり正解数においても、解答文の質的表現からしても、かなり低位である、ことがわかった。(2) 調査テスト問題に対する生徒各人の意見を述べた解答は、その思考の過程を通して系統性・関連性が無く、まとまりに欠けていて、 「系概念」の意識化からはほど遠い、と指摘できる―。(3) 解答項に示された内容から、自らの既得知識・経験・体験を、眼前の事象に直接的、短絡的に結びつける傾向を示す生徒が多く、総合的にみる見方・考え方の育成がいまだ十分ではない。(4) 「系概念」形成のために、中学校理科および高等学校「理科 I」でさらに「人間と自然」の単元の学習指導を、より深く実施する必要がある。

  • 遠西 昭寿, 清水 美保
    1986 年27 巻1 号 p. 33-41
    発行日: 1986年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    本研究は児童の地球の形と重力に関する概念を面接法によって調査したものである。被験者は小学校2年、4年、6年生の計64名である。面接結果は、地球の形、地表における重力の方向、地球内部における重力の方向、宇宙における重力の4つのカテゴリーに関して詳しく分析され、サブカテゴリーが設定された。これらの結果から次のことが明らかになった。1.どのカテゴリーでも、より年齢の低い子どもの方が多様なサブカテゴリーに属する。宇宙における重力に関するカテゴリーを除いて、ほとんどの6年生は高いサブカテゴリーに属する。2.性差はどのカテゴリーでも見られた。3.被験者の中には絶対上下の概念を持ちながら、地球上のどこにでも住むことができるという概念を持つ者が存在する。

  • 西依 節雄
    1986 年27 巻1 号 p. 43-48
    発行日: 1986年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    1981年から1983年にかけての約 2年間、筆者は福岡襲学校中学部において聴覚障害児教育に携わった。理科の授業を進めるにあたって困難を感じた単元の一つに音の教材がある。理科の授業においてより効果的な教具としてICオペアンプ(演算増幅器)とLEDを用いた「検音器」を開発した。 ICオプアンプとLEDを使用したのは、次の理由による。1)これらは汎用性のある電気部品として容易に入手できる。2)オペアンプは外部に付加する抵抗によって増幅度を自由に設定できる。3)オペアンプは電圧のコンパレータとしても利用できる。4) LEDの発光に要する消費電力は極めて小さい。5) LEDは感応しやすく、応答が速い。検音器は大きさが手ごろで、電源も乾電池を使用しているのでどこででも活用できる。筆者は岡山聾学校において、この検音器を用いて音の伝わり方と反射の授業を試行した。これは聴覚障害児にとってこれらの学習内容に極めて効果的であった。この教具は理科の実験だけではなく、聴覚に障害を持つ幼児への発音訓練にも適用できる。

  • 鳥本 昇
    1986 年27 巻1 号 p. 49-56
    発行日: 1986年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    植物色素を用いた染色は、その過程で起こる顕著な色の変化に児童生徒は興味を示すので、物質に親しませるためのよい教材となる。1. 藍(タデアイ、Polygonum tinctorium Lour.)、くちなし(クチナシ、 Gardenia jasminoides Ellis)およびきはだ(キハダ、 Phellodendron amurense Rupr.)を用いて、染色する方法について述べた。2.これらの染色布を長時間太陽光にさらしたり、太陽光にさらしては石けんで水洗いをくり返すと、次第に褪せてくる。そして、後者の方がより褪せた。藍染色布は、くちなしおよびきはだ染色布にくらべて、耐光性ならびに耐水性が大きかった。3.くちなしを用いた染色では、アルミ媒染と非媒染において色、耐光性、耐水性に差が認められず、媒染の効果はみられなかった。4.藍とくちなしまたはきはだを用いて、天然の色素では得ら和ない緑色に染める方法について述べた。5.これらの緑色布と天然の緑色色素である葉緑素、合成緑色染料であるマラカイトグリーンで染めた緑色布の反射スペクトルを比較し、緑色について考察した。6.くちなし一藍およびきはだ一藍で染めた二種類の緑色布を長時間太陽光にさらしたり、太陽光にさらしては石けんで水洗いをくり返すと、緑色布は次第に青色に変化した。

  • 竹村 安弘
    1986 年27 巻1 号 p. 57-61
    発行日: 1986年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    化学の学習の成就は、近代化学の進歩が元素の周期律の発見に負うところが大きかったと同様に、元素の周期律の理論を抜きにしてはあり得ないものと考えられる。かかる考えに基づいて、周期律の理論の中等化学への導入の方法を検索するため、化学教育のためにこれまでに提案された「元素の周期律を具体的に明確に示すデータ」を整理、検討した。次いで、アルカリ金属とアルカリ土類金属を中心として、同一族元素およびその化合物の相互の物理的、化学的性質の類似性と相違を示すデータについて若干の提案をした。まず原子半径とイオン半径に関するデータを整理し、次いでアルカリ金属、アルカリ土類金属およぴハロゲンとそれらの各種塩の密度や融点などの物性における周期律を検討するとともに、水に対する溶解度などの化学的性質に対するデータも併せ取り扱うべきことを強調した。最後に、固体物質の化学的性質を反映するデータとして、鉄触媒におけるアルカリ金属およびアルカリ土類金属の化合物の助触媒作用を例にとって説明、検討を加えた。

  • 菅田 良仁, 佐伯 敬一
    1986 年27 巻1 号 p. 63-68
    発行日: 1986年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    小学校6年「電磁石」の単元で、鉄釘を磁心として、そのまわりにエナメル線を巻いた電磁石を使っている。教科書には、アルコールランプで赤くなるまで熱し、その後空冷した釘を使用するよう書かれている。これは釘に焼きなましという熱処理をしているものと考えられる。熱処理には消磁の効果があることが良く知られている。この焼きなましをした釘は確かに磁気を示さない。しかしこれを電磁石の磁心とし、コイルに電流を流し磁化すると、電流を切った後も磁気を示す。磁気を消すためには再び焼きなましをせねばならない。これでは何のために焼きなましをせねばならないのか、筆者らは長く疑問としてきた。今回この焼きなましの効果を調べるため、アルコールランプ、ガスバーナー、電気炉を使用して焼きなましを行ない、磁気の残留状態を比較した。定量的にするため、筆者らがすでに報告しているヒステリシス曲線 (I- B図)と、電流と吸引力の関係(I-F図)とを測定して詳しく調べた。1000℃の電気炉で処理した釘は、残留磁束密度が0となった。これは電流を切った時磁気がなくなることを意味する。また、他の方法での処理の結果から、焼きなまし温度について検討した結果を報告する。

  • 鬼塚 史朗
    1986 年27 巻1 号 p. 69-74
    発行日: 1986年
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    糸電話は小学校2年次の「音あそび」の単元にはよく適した教材として、すべての教科書で扱われている。しかし、これについてのデーターや解説は少ない。筆者は今般、この糸電話についての実験を行い、次に述べる結果を得たので報告する。糸電話の周波数特性は100~1000Hzの間ではいたって平坦であるが、 1000Hzをさかいにして極端に悪化すること、 800m以上の通話が可能であること、糸を伝わるのは縦波で、その速さは3000m/s以上であることなどである。また、糸の太さや張力の最適値についても考察した。糸電話は意外に良好な特性をもっていることが確かめられた。

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