1988 年 29 巻 2 号 p. 45-53
実験技能の評価には実験テスト(パフォーマンステスト)と筆記テスト(ペーパーテスト)が使われているが、両者の関係を明らかにし、実験指導のあり方を考察するために、同一学習内容についての実験テストと筆記テストを同一の生徒について実施し、その結果を統計的に処理して考察した。具体的には、中学校の第2学年の生徒に、ろ過の実験テストと筆記テストを実施して、その結果を理科の学力検査・定期考査の結果と比較して考察したところ、次のことが明らかになった。 1. ろ過実験に関する知識と技能の相関については (1) ろ過実験の技能はろ過実験の知識とは異なる学力(技能能力も含めた広い意味での学力)であると共に通常考えられている理科の学力とも異なる。 (2) ろ過実験の技能を評価するには、ペーパーテストでは不適当であり、実験テストが必要である。 2. 教師のろ過実験の指導法については (1) 平素の筆記テストの成績にとらわれないで各生徒の実験技能の差に応じた指導が大切である。 (2) 「ろ紙の折り方」「ガラス棒とビーカーの位置」の操作は教科書程度の知識を習得させることに重点を置けば技能も上達する。 (3) 「ガラス棒の先の位置」「ろうとの足の位置」の操作は教科書程度だけでは不充分であり、その技能を上達させるには反復練習が必要である。