1990 年 30 巻 3 号 p. 1-6
中学校理科の「水溶液の濃度・液量と生成物の量」の項で、各社の教科書と教師用指導書に取り上げられている硫酸バリウムの沈澱反応を検討し、次の諸点を明らかにした。 1) アルカリ性側での硫酸バリウムの沈降には長時間を必要とし、授業時間内に沈澱量を高さ(体積)として読み取るのは無理であること。 2) アルカリ性側での硫酸バリウムの沈降は、強アニオン系高分子凝集剤(OA-7等)の添加により著しく促進され、5分間程度で沈澱量に比例した沈澱の高さが読み取れること。 3) 酸性・アルカリ性両領域にまたがる硫酸バリウムの沈澱作成では、カチオン系高分子凝集剤(c-360等)の添加により、両領域での粒度をそろえることができ、この場合も、5分間程度で沈澱量に比例した沈澱の高さが読み取れること。また、先報の中学生による凝集剤を用いた実験を参照して、硫酸バリウムの沈澱作成に凝集剤を利用することの、教材としての妥当性についても考察した。