1990 年 31 巻 1 号 p. 11-19
英国のCSMSが開発したSRTsのなかのひとつ「てこの課題」を使って、わが国に於ける児童・生徒を対象に各学年での認知レベルの分布を調べた結果、次の点が明らかになった。(1) 児童・生徒の各学年とも認知レベルの多様性が認められた。特に、小学校の6年生や中学校1年生と2年生の場合は認知レベルの3B、3A、2B、2Aの各4つのレベルの学習者がやや同じ変化で分布しているのが認められた。したがって、「一斉指導」では学習者に理解させることは難かしい。ぜひとも学習の「個別化」の実現を要する。(2) 日・英での同一年齢群の認知レベルを比較すると、わが国の方が「形式的操作期」にある認知レベルの学習者がめだって多い。これは、教育制度の違いや理科・算数の教科構造と深くかかわっているものと考える。(3) 中学校での各学年の認知レベルの分布の状況を理科カリキュラムと対応させると適合性について若干の問題が指摘できる。(4) SRTsを使って、学年または学級間の認知レベルの分布の状況が簡単に判別でき理科の指導計画を作成するのに役立つものと考える。