日本理科教育学会研究紀要
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東ドイツの初等教育における理科的領域の取り扱い―「郷土科」の新旧学習指導要領の比較一
宮野 純次
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1990 年 31 巻 2 号 p. 1-8

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抄録

東ドイツの初等教育段階では、教科「国語」の中の科目「郷士科」において社会科的、理科的領域の学習が行われている。本稿では、「郷土科」の新旧学習指導要領を比較することにより、そこでの理科的領域の学習がどのように改訂されたかを検討した。本研究では、まず、学習指導要領改訂の経緯を「郷士科」を中心に概観した。次に、「郷士科」の改訂の理由と課題を明らかにした後で、具体的にどのような改訂が行われたかに言及した。「郷士科」の改訂にあたっては、学習領域が大きく社会科的領域と理科的領域の2領域に分けられ、各領域における知識の特殊性や系統性の確立が意図されたが、理科的領域においては、以下のことが明らかになった。(1) 第1学年において教材や授業時間数が増やされ、四季を通じて気象現象、植物、動物に関する学習が行われるようになり、幼稚園との関連も強化された。(2) 他学年においてもこれまでの成果が汲みあげられ、季節における気象現象との関連が強化されるなど取り扱いの重点が明確にされた。(3) 第4学年においては、観察や実験といった教科に特有な学習方法の習得など第5学年以降の教育への準備が確実にされようとしている。今回の改訂により、理科的領域において、児童が、気象現象や植物、動物に関する知識だけでなく、季節の変化と植物、動物の行動及び人間の活動との関連も認識し、自然を生物界と無生物界の統一として直観的に分かりやすく理解できるようになることが目指されていると言えよう。

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© 1990 一般社団法人日本理科教育学会
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