日本理科教育学会研究紀要
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「人体」に関する子どもの認識方法の多様性
森本 信也竹内 明人
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1994 年 35 巻 1 号 p. 65-75

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抄録

本研究では,基本的な人体の機能と構造についての認識調査をもとに子どもの知識構成の多様性を明らかにした。その抽出においては,知識構成における情意的側面の影響をも加味したブルーム(Bloom, J.W.)の意味構成の文脈による分析を用いるとともに,子どもの生物学的領域での理解について研究したケアリー(Carey, S.)の知見との比較も試みた。その結果,以下のことが明らかになった。(1) 人体の認識においては,「血液は栄養とか酸素を全身に運ぶ」というような直観的生物学による説明である学校知と,「血液は動いたり,生きていくために必要」というような心理学的・社会的必要性による説明である日常知の両方が見られた。(2) このような認識の背景には,意味論的な知識,エピソードなどの他に,感情-価値観-審美眼,メタファーといった情意的要素が存在しており,それらを用いて知識を構成している。(3) 知識構成や関心・意欲・態度の変容における情意的側面の影響を示すことによって,子どもの自然認識の発展は単なる情報伝達ではなく,価値観などを込めた交流の中で起こることが明らかになった。

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© 1994 一般社団法人日本理科教育学会
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