1995 年 35 巻 3 号 p. 23-31
大学生を対象に,過去の理科実験に関するエピソードを調査した。その結果,小学校の理科実験の記憶は数多く保持されていることが分かった。また,否定的なエピソードよりも肯定的エピソードを持つものが多いことが分かった。小学校及び中学校では,特に化学分野の気体に関する実験をよく記憶しており,また,否定的エピソードを持つ実験・観察に,薬品を用いたものや生物の解剖を挙げている。子どもは理科実験に関する過去のエピソードを長期記憶に多く貯蔵しており,教師が子どもの既有の概念のみならず,彼らの既有のエピソードを十分知ることで,実験の意義や目的,価値性などを再認識させたり,認知的方略を育成したりするのに役立つと考える。