日本薬理学雑誌
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原著
ベンゾジアゼピン系抗不安薬のマウスにおける抗不安作用,協調運動障害作用ならびに健忘惹起作用に及ぼすフルボキサミンの影響
今西 泰一郎小野沢 要林 晶子馬場 淳
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2001 年 118 巻 6 号 p. 403-410

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抄録
選択的セロトニン再取り込み阻害薬のフルボキサミンが臨床で用いられる場合, 他の向精神薬と併用されることが多い. そこで今回, ベンゾジアゼピン系抗不安薬の主作用ならびに副作用に対するフルボキサミンの影響についてマウスを用いて検討した. 抗不安作用の評価には明暗箱試験を用い, 協調運動障害ならびに健忘惹起の副作用の指標としてそれぞれ回転棒試験と受動回避試験を行った. ベンゾジアゼピン系抗不安薬には代表的なジアゼパムとともにロフラゼプ酸エチルとその活性代謝物のCM7116を用いた. その結果, ジアゼパム, ロフラゼプ酸エチルならびにCM7116の抗不安作用はフルボキサミン10 mg/kgの腹腔内投与により増強されたが, フルボキサミンの45 mg/kgではロフラゼプ酸エチルの作用のみが増強され, ジアゼパムとCM7116では明らかな増強は認められなかった. 一方, ジアゼパム, ロフラゼプ酸エチルならびにCM7116の協調運動障害作用と健忘惹起作用はフルボキサミンの10 mg/kgにより影響されなかった. フルボキサミンを45 mg/kgに増量することによりジアゼパムの副作用のみが増強あるいは増強される傾向が観察されたが, ロフラゼプ酸エチルならびにCM7116の副作用は影響されなかった. なお, いずれの試験においてもフルボキサミンは単独作用を示さなかった. 以上の成績より, フルボキサミンは低用量でベンゾジアゼピン系抗不安薬の主作用を増強するが, 高用量では併用する抗不安薬によってはその副作用も増強することが示唆された. 従って両者を併用する際には, お互いの用量を減じても十分な抗不安作用が期待できる可能性を踏まえて, 副作用を回避するための慎重な用量設定が必要であると考えられる.
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© 2001 公益社団法人 日本薬理学会
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