日本薬理学雑誌
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118 巻, 6 号
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総説
  • 橋本 敬太郎
    専門分野: その他
    2001 年 118 巻 6 号 p. 363-370
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    Na+/H+交換系は細胞膜に存在するNa+とH+の交換を行う輸送タンパク質で, 電気的には等価でNa+とH+を逆方向に交換し, 通常はH+の細胞外への排出をNa+勾配を利用して行い, 嫌気的な代謝や酸化的代謝で発生するH+を排出している. アイソザイム1が心筋に存在し, 生理的および病態生理的に重要な役割を果している. またプロテインキナーゼCを介するリン酸化で活性化される事から交感神経α刺激, プリン受容体刺激, エンドセリン, アンジオテンシン受容体刺激, さらにトロンビンもNa+/H+交換を促進させる. H+の増加が急激に起こる心臓の虚血·再灌流時にはNa+/H+交換系の果す役割は特に重要になると考えられ, 虚血が起こりH+の増加が起これば, Na+/Ca2+交換系を介してNa+を細胞外に排泄することになり(reverse mode), それと共に細胞内にCa2+が増加し, いわゆるCa2+オーバーロードを起こすことが考えられる. このNa+/H+交換系を抑制する選択的薬物としてカリポリド(cariporide, HOE642)が古くから利尿薬として使われているアミロライドから開発された. Na+/H+交換系のアイソザイム1を選択的に抑制する薬物で, その他の薬物と共に, 動物実験レベルでは, 虚血による各種心筋障害を抑えることが示されている. 心筋障害という言葉は広い意味を含むが, 多くの場合は動物心筋梗塞モデルにおける虚血領域に占める壊死に陥った割合, すなわち梗塞サイズの縮小をもって評価する事が多く, Na+/H+交換薬についても縮小することが示されている. またβ遮断薬, Ca2+チャネル抑制薬, Na+チャネル抑制薬などの薬物と異なり, Na+/H+交換薬では虚血を開始した後の投与でも有効であることが, 今後の臨床応用において注目されている. 本総説では特に抗細動作用を中心にNa+/H+交換薬の現状をまとめてみた.
  • 一瀬(鷲見) ちほ, 大槻 眞嗣, 白石 弘章, 野村 隆英
    専門分野: その他
    2001 年 118 巻 6 号 p. 371-377
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    テトラヒドロビオプテリン((6R)-L-erythrotetrahydrobiopterin, BH4)は生体内でGTPを基質として生合成される. 生合成酵素は, 律速段階であるGTPシクロヒドロラーゼI, 6-ピルボイルテトラヒドロプテリン合成酵素(6-pyruvoyl-tetrahydropterin synthase, PTPS), セピアプテリン還元酵素から成る. BH4生成の異常で生じる疾患には, 悪性高フェニルアラニン血症, ドパ反応性ジストニアがあるが, パーキンソン病, 精神分裂病などにおいてもBH4の代謝異常が原因あるいは増悪因子になっている可能性が示唆されている. 一方, BH4は血管保護因子としても注目され, その機能低下が動脈硬化症の発症に関与する. 最近, 著者らの研究室ではジーンターゲッティングの手法を用いてBH4生合成の第2段階を触媒するPTPS遺伝子を破壊したPTPSノックアウトマウスを作成した. これらモデルマウスを用いた研究がBH4の神経系, 循環系疾患の発症における役割やその治療法の開発に貢献すると考えられる. 著者らの研究室では, 原生動物であるテトラヒメナがBH4の異性体であるテトラヒドロモナプテリンを有しており, そのレベルは細胞周期に関係することを見いだした。BH4以外のプテリン誘導体がヒトの生理·病態にどのように関っているかも興味深い研究課題である.
実験技術
  • 小畑 俊男
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2001 年 118 巻 6 号 p. 379-382
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    マイクロダイアリシス法は近年めざしましい進歩をとげ, 精力的に行われているが, 心臓は他の臓器と異なり拍動するため心筋への応用は困難とされてきた. 著者の開発したマイクロダイアリシス法はプローブと心臓の動きを連動させ, プローブと組織との摩擦を除去し, 心臓に対する負荷を和らげるよう工夫したものであり, 長時間の生体物質の測定が可能である. 本稿ではin vivoマイクロダイアリシス法により心筋中に発生するラジカルの測定法, アデノシン産生によるエクト5’-ヌクレオチダーゼ活性の評価法について概説する. これらの方法によって得られたin vivo評価法は心臓疾患のメカニズムなどの解明に応用が可能で, 有益な情報をもたらすものと思われる.
  • 岡島 史和
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2001 年 118 巻 6 号 p. 383-388
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    S1Pは細胞増殖, 分化, 接着, 運動, アポトーシスのような様々な細胞機能に関与していることが知られてきた. このS1Pは当初, 細胞内ターゲットを介して作用すると考えられていたが, Gタンパク質連関受容体を介し, 細胞外シグナル伝達分子として機能する場合があることも判ってきた. S1Pの生理機能, 病態生理における役割を知るためには, 作用解析のみならず, S1Pの動態制御を知ることも重要である. 我々は最近, S1Pの定量法として, S1P受容体の一つEdg-1を強発現した細胞上での標識S1Pと検体中S1Pの競合反応を利用したラジオレセプターアッセイ法を開発した. 本稿では従来法との比較とその問題点, また, 我々がこの測定法を用いどのような研究をおこなっているか, 今後の展望などについて述べた.
新薬開発状況
  • 平川 洋次, 下川 宏明
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2001 年 118 巻 6 号 p. 389-395
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    動脈硬化性疾患の予防において, 高脂血症治療の重要性が認識されるようになり, 多くの高脂血症治療薬が開発されてきた. 高脂血症治療薬は, HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)·陰イオン交換樹脂·ニコチン酸·フィブラート系·probucolなどに大別されるが, 中でも, 三共が世界に先駆けて開発したpravastatin(メバロチン®)に代表されるHMG-CoA還元酵素阻害薬の開発は, それまでの高脂血症治療に大きな変革をもたらした. 現在においても, pitavastatinやrosuvastatinなどの新しいHMG-CoA還元酵素阻害薬が開発の途中にある. それ以外にも, フィブラート系のgemfibrozilなどすでに海外で高い評価を得ているものに加えて, ACAT阻害薬であるF-1394·CS-505ならびにLPL活性化薬であるNO-1886など, 我が国で新規に開発された薬剤も続々と登場しており, この分野では我が国が世界をリードしているといっても過言ではない. 本稿では, 現在我が国で開発中の新しい高脂血症治療薬について概説する.
新薬紹介総説
原著
  • 今西 泰一郎, 小野沢 要, 林 晶子, 馬場 淳
    専門分野: その他
    2001 年 118 巻 6 号 p. 403-410
    発行日: 2001年
    公開日: 2002/09/27
    ジャーナル フリー
    選択的セロトニン再取り込み阻害薬のフルボキサミンが臨床で用いられる場合, 他の向精神薬と併用されることが多い. そこで今回, ベンゾジアゼピン系抗不安薬の主作用ならびに副作用に対するフルボキサミンの影響についてマウスを用いて検討した. 抗不安作用の評価には明暗箱試験を用い, 協調運動障害ならびに健忘惹起の副作用の指標としてそれぞれ回転棒試験と受動回避試験を行った. ベンゾジアゼピン系抗不安薬には代表的なジアゼパムとともにロフラゼプ酸エチルとその活性代謝物のCM7116を用いた. その結果, ジアゼパム, ロフラゼプ酸エチルならびにCM7116の抗不安作用はフルボキサミン10 mg/kgの腹腔内投与により増強されたが, フルボキサミンの45 mg/kgではロフラゼプ酸エチルの作用のみが増強され, ジアゼパムとCM7116では明らかな増強は認められなかった. 一方, ジアゼパム, ロフラゼプ酸エチルならびにCM7116の協調運動障害作用と健忘惹起作用はフルボキサミンの10 mg/kgにより影響されなかった. フルボキサミンを45 mg/kgに増量することによりジアゼパムの副作用のみが増強あるいは増強される傾向が観察されたが, ロフラゼプ酸エチルならびにCM7116の副作用は影響されなかった. なお, いずれの試験においてもフルボキサミンは単独作用を示さなかった. 以上の成績より, フルボキサミンは低用量でベンゾジアゼピン系抗不安薬の主作用を増強するが, 高用量では併用する抗不安薬によってはその副作用も増強することが示唆された. 従って両者を併用する際には, お互いの用量を減じても十分な抗不安作用が期待できる可能性を踏まえて, 副作用を回避するための慎重な用量設定が必要であると考えられる.
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