脳微小血管は,血液脳関門として自由な物質輸送を制限する一方で,血液と脳の間における栄養素,イオン,水,酸素等の輸送を行う.近年,脳微小血管に存在する輸送体分子の実体と,それらの病態における変化が明らかになりつつある.脳微小血管には,促通拡散型のGLUT1がグルコーストランスポーターの主要なサブタイプとして,アクアポリン4が水輸送を行う分子として,p-糖タンパクが異物排出トランスポーターとして発現している.脳微小血管内皮細胞間のタイトジャンクションを構成している分子として,オクルディンとクローディン5が同定された.また,輸送体の機能は,アドレナリン作動性神経等の神経活動,およびアドレノメデュリン等の生理活性ペプチドにより調節されていることが明らかとなってきた.これらの脳微小血管に存在する輸送体の活性および発現を制御することにより,脳浮腫等の脳血管障害のみならず,神経変性疾患,脳の発達異常や老化に対する新たな予防·治療法の可能性が生まれてきた.