日本薬理学雑誌
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ミニ総説号「粘膜の生理と病態」
小腸粘膜の生理と糖尿病治療
奥村 利勝高後 裕
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2002 年 120 巻 1 号 p. 29-31

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抄録

近年増加傾向にある糖尿病の治療は,血糖値を適正な領域に維持することが基本である.経口摂取した食物がいかに血糖値に反映されるかを理解する必要があり,糖質の消化,吸収には小腸粘膜の生理を知ることが重要である.食物中の糖は小腸で消化され2糖類から単糖類に分解され小腸上皮より吸収される.この際に2糖類を分解するαグルコシダーゼ阻害薬を用いると,糖の吸収が遅れ血糖値の上昇パターンが変化する.この作用は糖尿病患者の血糖値の改善につながり,現行広く臨床で用いられる薬剤の開発へつながった.加えて,食欲や胃排出は血糖値への影響が強い.小腸上皮で作られるアポリポプロテインA-IVが中枢神経系を介して食欲や消化管機能を抑制する.この作用は糖尿病の病態を考えると食物摂取を抑制してエネルギー摂取量を抑制し,胃排出能を抑制して小腸での糖吸収を遅延させることを示唆し,糖尿病治療に貢献することを考えさせる.従って,アポA-IVが糖尿病治療の新しい分子ターゲットになる可能性がある.

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© 2002 公益社団法人 日本薬理学会
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