日本薬理学雑誌
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実験技術
モルモットの喉頭へのクエン酸微量注入による咳誘発モデル
田中 求河本 定則丸山 敬
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2002 年 120 巻 4 号 p. 237-243

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抄録
咳に関する研究では,麻酔下でポリエチレンチューブなどにより気管を刺激して,横隔膜および腹直筋の筋電図を指標に咳を同定する方法や,クエン酸またはカプサイシンのような化学物質の吸入により咳を誘発し,無麻酔·拘束下で2-チャンバー方式のプレチスモグラフを用いて,胴体部のチャンバー内の圧変化により咳を同定する方法などがある.咳は麻酔の深度に影響を受けやすいこと,またカプサイシンやクエン酸のような刺激性物質の吸入は2回目の反応が著しく低下することから,同一動物を用いて鎮咳薬の評価をすることは困難であった.しかし,今回我々が開発した喉頭内微量注入による咳誘発モデルは,無麻酔·無拘束の条件下で24時間間隔の繰り返し適用でも咳を安定して誘発できることから,同一動物を用いて鎮咳薬の効果を評価することが可能であった.また,Buxco社製の呼吸機能解析システムによる呼吸反応の波形とチャンバー内へマイクを内蔵することにより得られた音声とを同じ時間軸で記録することにより呼息反応を,呼息反射(expiration reflex),ためいき(sigh),嘔気(retching),咳(cough)とくしゃみ(sneeze)に分類することができた.吸入実験の多くは2回目以降の反応の減弱はタキフィラキシーであると報告しているが,我々の実験系では24時間間隔の繰り返し適用ではほとんど反応性が回復していることから,吸入による反応の減弱は息こらえなどの別の機序が考えられる.以上の結果から本咳誘発モデルは呼吸の吸入量や息こらえなどに影響されることなしに咳を確実に誘発できること,24時間間隔の繰り返し適用ができること,咳以外の呼息性反応から咳反応を単離できることなどから,咳に対する鎮咳薬の効果を精度良く評価することができると思われる.
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© 2002 公益社団法人 日本薬理学会
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