日本薬理学雑誌
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総説
クラスIII群抗不整脈薬の変伝導作用に関する最近の知見
丸山 徹伊東 裕幸
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2002 年 120 巻 5 号 p. 335-342

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抄録

抗不整脈薬のVaughan-Williams分類におけるIII群薬は,従来興奮伝導速度を変化させずに不応期を延長させることによって抗不整脈作用を発現するとされていた.しかし近年,個々のIII群薬に変伝導作用があることが次第に明らかになりつつある.代表的なIII群薬であるアミオダロンは急性投与では明らかな,慢性投与でも軽度の陰性変伝導作用を示すが,能動的または受動的な伝導速度の規定因子に対する作用は両者で異なる.またソタロールも好気的条件下では明らかな変伝導作用は認めないとする報告が多いが,嫌気的条件下では抑制された心筋細胞間の電気的結合を正常化することで陽性変伝導作用が期待される.さらに純粋なIII群薬であるニフェカラントやドフェチリドは定常興奮に対する変伝導作用はないとされるものの,先行興奮の不応期を延長して早期興奮に対する強さ-間隔曲線を右上方へシフトさせることによって,早期興奮に対してみかけ上の陽性変伝導作用を示す可能性が示唆される.これは伝導遅延をともなう早期興奮が興奮旋回性不整脈の引き金になることを考慮すれば重要な所見である.今後III群薬の様々な変伝導作用がさらに解明されれば,新たな抗不整脈薬の開発につながり不整脈の薬物療法が大きく発展することが期待される.

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© 2002 公益社団法人 日本薬理学会
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