日本薬理学雑誌
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ミニ総説号「Heat Shock Protein (HSP) の薬理学への応用:創薬への可能性」
低分子量HSPの新たな生理活性:抗血小板作用
松野 浩之小澤 修
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2003 年 121 巻 1 号 p. 21-25

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抄録
HSP27,HSP20,αBクリスタリンはアミノ酸の一次構造が類似している低分子量HSPである.これらは,いずれも血管壁に存在しており3つは重合体を形成していることが最近の研究で判明した.従来の分子シャペロン以外の生理活性が存在する可能性を検討した結果,血小板凝集に対して抑制作用があることがHSP20及びαBクリスタリンに認められた.特に,トロンビン刺激に対する凝集を用量依存的に抑制し,この反応はPAR-1受容体を介する刺激を抑制することが確認された.また,botrocetin刺激による凝集反応にも抑制作用を示し,GPIb/V/IX - vWF axisとの相互作用の可能性も示唆された.HSP20及びαBクリスタリンは,血小板膜上に結合部位が存在し,血小板活性化の際,Ca2+の流入を抑制していることも確認された.これらは,in vivoの血栓モデルにおいて強力な血栓形成抑制作用を示した.また,アミノ酸の一次構造から9つのアミノ酸が,この抑制作用に重要な作用を示すことが確認された.これらの結果は新しい抗血小板薬の開発につながるものと考察された.
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© 2003 公益社団法人 日本薬理学会
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