日本薬理学雑誌
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ミニ総説号「PPARγの生理機能から創薬まで」
PPARγと炎症反応:マスト細胞を中心に
前山 一隆恵美 真以子千原 一泰
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2003 年 122 巻 4 号 p. 325-330

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抄録

PPARγはステロイドホルモン受容体スーパーファミリーに属する核内転写因子であり,脂肪や糖の代謝調節に重要な役割りをもつことから,そのアゴニストはインスリン非依存性糖尿病の治療薬として開発されてきた.PPARγは炎症や免疫反応にも深く関わっており,特に単球/マクロファージにおけるPPARγの発現と機能の解析が進んできた.PPARγはマクロファージにおいてサイトカイン産生を抑制性に調節していることが明らかとなり,マクロファージがその病態と深く関連していると考えられる関節リウマチや動脈硬化の治療に対しPPARγのアゴニストが新たな治療薬として考案されるに到った.マスト細胞は骨髄幹細胞由来の炎症細胞のひとつであり,即時型アレルギー反応を引き起こす主要な細胞であるが,PPARγに関する研究は極めて少ない.PPARγの内因性リガンドとして挙げられる15-deoxy-Δ12,14prostaglandin J2(15d-PGJ2)はPGD2の代謝物であり,マスト細胞が生体内におけるPGD2の主要な産生細胞であることから,マスト細胞に発現するPPARγは,増殖·分化ならびに炎症反応に深く関わっていることが予想される.本稿ではPPARγのヘテロノックアウトマウスの培養骨髄細胞由来マスト細胞を用いて,マスト細胞におけるPPARγの機能を考察する.

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© 2003 公益社団法人 日本薬理学会
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