抄録
細胞あるいは組織が様々なストレスに暴露されると,ストレスタンパクと呼ばれる特殊なタンパクの合成が促進される.熱ショックタンパクはストレスタンパクの一種である.熱ショックタンパクの中でもHsp72は,心筋虚血/再灌流障害に対する心筋細胞の耐性を上昇させ,梗塞巣拡大阻止や再灌流時の心機能回復を促進させる効果が知られている.これらの知見は正常動物の心筋細胞にHsp72を予め誘導,あるいはHsp72を過剰発現させたトランスジェニックマウスを用いた実験結果によるものである.Hsp72がストレスによる障害から心筋細胞を保護する細胞防御機構で重要な役割を演ずることは多くの研究者により認められるところであるが,病態下での心筋組織のHsp72を含めたHsp70ファミリーのタンパク誘導能と,ストレス後の心機能の関係は明らかではない.そこで,本稿では心筋梗塞後の生存心筋組織でのHsp72およびHsp73誘導能について紹介し,病態下でのHsp70ファミリータンパクと心機能の関係を考察する.