日本薬理学雑誌
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ミニ総説号「心不全発症の分子的理解と治療について」
慢性心不全における体液性因子と心室リモデリング
小玉 誠太刀川 仁柏村 健林 学吉田 剛塙 晴雄相澤 義房仲澤 幹雄渡辺 賢一
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2004 年 123 巻 2 号 p. 63-70

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抄録
慢性心不全では神経体液因子と機械的負荷によって徐々に心室リモデリングと心機能障害が進行してゆく.このため慢性心不全では,基礎心疾患の治療が最も重要であるが,次いで心室リモデリングの予防と是正が主たる治療目標となる.心室リモデリングを引き起こす神経体液因子としてはカテコラミン,アンジオテンシンII,アルドステロン,サイトカイン,過酸化物,自己抗体などが知られている.これらの神経体液因子の抑制によって心室リモデリングが予防できるか否かを,ラット心筋炎後拡張型心筋症モデルを用いて検討した.検討した薬物はアンジオテンシン変換酵素阻害薬(quinapril,imidapril,benazepril),アンジオテンシン受容体拮抗薬(valsartan,candesartan,TA606)とamiodaroneである.心筋炎の急性期を生存しえたラットに第28日から第70日まで薬物を投与し,血行動態,病理所見,各種mRNA発現を検討した.これらの薬物はいずれも血行動態と心機能を改善し,心筋線維化を抑制し,心房性利尿ホルモンとコラーゲンのmRNA発現を抑制した.アンジオテンシン変換酵素阻害薬はアンジオテンシン受容体拮抗薬に比べ心室リモデリング抑制効果が強かった.慢性心不全の治療には神経体液因子を幅広くかつ強力に抑制することが重要と考えられる.
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© 2004 公益社団法人 日本薬理学会
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