日本薬理学雑誌
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総説
向精神薬の作用機序:神経細胞新生との関係
氏原 久充
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2004 年 123 巻 5 号 p. 319-328

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抄録

近年新しい精神科治療薬が次々と登場し精神障害の薬物療法は革新の時期を迎えている様に思われる.さらに,成熟後の脳であっても神経組織は再生可能であり,実際に神経細胞の新陳代謝が日常的に起こっているらしいという認識ができつつある.ここ数年間で蓄積された成熟個体での神経細胞新生の知見によって精神障害の治療戦略そのものが変化せざるを得なくなってきているのである.これらの知見は,精神障害の発生メカニズムの理解にまで影響を与えるだろう.すなわち抗うつ薬·気分安定薬·精神病治療薬さらに電撃けいれん療法の作用機序が神経栄養因子や抗アポトーシス分子の誘導,あるいはアポトーシス促進分子の阻害という形で整理されつつある.臨床実践の場で神経細胞新生·神経細胞保護仮説を支持する知見が蓄積していくことで,新しい薬理作用の理解が深まり,より合理的で効果的な精神障害の治療法が確立されることが望まれている.ここでは,急速に進歩している抗精神病薬等の新しい薬理学の理解について総説した.

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© 2004 公益社団法人 日本薬理学会
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