日本薬理学雑誌
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123 巻 , 5 号
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総説
  • 伊藤 崇志, 東 純一
    2004 年 123 巻 5 号 p. 311-317
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/27
    ジャーナル フリー
    高脂血症や糖尿病,高血圧症などの生活習慣病の増加に伴い,冠動脈疾患をはじめとする動脈硬化性疾患が増加の一途をたどっている.タウリンは,循環器疾患に有効である可能性がこれまでの研究から明らかにされつつある.また近年,数々の報告から,タウリンが動脈硬化病変形成にいたるまでの様々な段階で抑制的に働くことが示唆されている.高コレステロール血症モデル動物において,タウリン投与によるLDLコレステロール低下作用やHDLコレステロール上昇作用,脂質酸化抑制作用を介し,動脈への脂質の蓄積が抑制されることが報告された.また,動脈硬化発症の引き金となる血管内皮機能障害がタウリン服用により抑制されることが報告された.タウリンは次亜塩素酸に対してスカベンジャー作用をもつことが知られ,近年の研究から,LDLの酸化にマクロファージ中のミエロペルオキシダーゼにより産生される次亜塩素酸が関与していることが明らかにされ,タウリンがLDLの酸化を抑えることが示唆された.さらに,タウリンと次亜塩素酸との反応物タウリンクロラミンは,NF-κBの活性化を阻害することにより白血球におけるサイトカイン産生を抑制することが報告され,サイトカインが動脈硬化の進展に大きく関与していることからも,動脈硬化抑制メカニズムの1つとして注目すべき作用である.
  • 氏原 久充
    2004 年 123 巻 5 号 p. 319-328
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/27
    ジャーナル フリー
    近年新しい精神科治療薬が次々と登場し精神障害の薬物療法は革新の時期を迎えている様に思われる.さらに,成熟後の脳であっても神経組織は再生可能であり,実際に神経細胞の新陳代謝が日常的に起こっているらしいという認識ができつつある.ここ数年間で蓄積された成熟個体での神経細胞新生の知見によって精神障害の治療戦略そのものが変化せざるを得なくなってきているのである.これらの知見は,精神障害の発生メカニズムの理解にまで影響を与えるだろう.すなわち抗うつ薬·気分安定薬·精神病治療薬さらに電撃けいれん療法の作用機序が神経栄養因子や抗アポトーシス分子の誘導,あるいはアポトーシス促進分子の阻害という形で整理されつつある.臨床実践の場で神経細胞新生·神経細胞保護仮説を支持する知見が蓄積していくことで,新しい薬理作用の理解が深まり,より合理的で効果的な精神障害の治療法が確立されることが望まれている.ここでは,急速に進歩している抗精神病薬等の新しい薬理学の理解について総説した.
実験技術
  • 石田 英之
    2004 年 123 巻 5 号 p. 329-334
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/27
    ジャーナル フリー
    細胞死にはネクローシスとアポトーシスがあり,両者ともミトコンドリアによってその運命が制御されている.とくにミトコンドリアPermeability Transition Pore(PTP)の開口は,チトクロムCの遊離を起こしてアポトーシスを誘導することはよく知られている.また,ミトコンドリアPTP開口阻害薬であるシクロスポリンA(CsA)が虚血再灌流障害によるネクローシスを抑制するとの報告もある.このように,ミトコンドリアPTPは,細胞の生死を調節する重要な因子であるが,その詳細は充分解明されていない.ここでは,ミトコンドリアPTPに関する最新の研究方法と心筋細胞死におけるミトコンドリアPTPの役割に関する検討を例にして,実験法を紹介する.
新薬開発状況
  • 大森 健守, 足立 圭, 真部 治彦, 原田 大輔, 大島 悦男
    2004 年 123 巻 5 号 p. 335-348
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/27
    ジャーナル フリー
    近年,気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患については多くのガイドラインが作成され,その診断法,病型分類,治療法が標準化されてきた.しかし,種々の要因によりアレルギー疾患患者数は増加する傾向にあり,新しい薬物の登場がまたれている.アレルギー疾患の病態解明において,肥満細胞が即時相のみならず炎症惹起因子を産生しアレルギー性炎症発現に重要な役割を演じていること,抗原提示細胞である樹状細胞の重要性が認識されてきたこと,ケラチノサイトなどの組織構成細胞も炎症細胞の標的になるだけでなくそれ自身サイトカインなどのアレルギー惹起物質を産生すること,神経ペプチドもアレルギー疾患発症に関係することなどの知見が蓄積されてきた.これらの新知見をもとに,IgE中和抗体,インターロイキン(IL)-4やIL-5などのTh2サイトカインやケモカインの中和抗体,デコイ受容体や受容体抗体,およびそれらの産生を阻害するアンチセンス療法,細胞接着分子に作用する薬物などが現在開発されている.また,ホスホジエステラーゼ4阻害薬,ケラチノサイトに直接に作用するCX-659Sなどの薬物,神経ペプチドであるタキキニンの受容体拮抗薬が多くの製薬企業において精力的に開発されている.抗アレルギー薬として汎用されているヒスタミンH1受容体拮抗薬もアレルギー性炎症に対する抑制作用を有することが明らかになってきた.以上のように,アレルギー疾患の病態解明は新しい治療薬の開発に直結するので,さらなる基礎研究の進歩を望む次第である.
新薬紹介総説
  • 山崎 裕之, 藤野 秀樹, 金澤 瑞穂, 玉木 太郎, 佐藤 文泰, 鈴木 幹夫, 北原 真樹
    2004 年 123 巻 5 号 p. 349-362
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/27
    ジャーナル フリー
    近年3-Hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A(HMG-CoA)還元酵素阻害薬(スタチン)は高コレステロール血症の治療薬としては最も頻用されている.ピタバスタチンカルシウムは従来よりも有効性に優れるスタチンを目指して,探索研究から臨床まで国内で開発された新規のスタチンである.薬物動態試験から,ピタバスタチンは肝臓に選択的に分布し,胆汁中に排泄された後効率よく腸肝循環し,長い血中半減期を示した.ピタバスタチンはモルモット肝臓でLDL受容体活性を促進し,肝灌流系でVLDL分泌低下作用を示した.また,0.3 mg/kg以上で血中コレステロール(TC)濃度の低下,1.0 mg/kg以上でトリグリセリド(TG)濃度の低下を示した.以上からピタバスタチンはLDL受容体の発現促進によりLDLコレステロール(LDL-C)濃度を低下させ,また,VLDL分泌低下作用によりTG濃度を低下させるとともに,LDL-Cの低下を増強すると推察された.14C-ピタバスタチンはin vitroのヒト肝ミクロソーム系では主にCYP2C9により8位水酸化体に代謝されるが,その水酸化反応のVmax/Kmは約2 µl/min/mgと他のスタチンの報告値の約1/8~1/100であり,代謝を受けにくいことが示された.また,他のヒトP450分子種の代謝反応に対する阻害作用は認められなかった.これから,ピタバスタチンはP450の関わる薬物相互作用は起こしにくいものと考えられた.臨床試験成績862例の集計で,ピタバスタチンの血中TC低下率は28%,LDL-C低下率は40%を示した.副作用の程度および種類は既存のスタチンと同程度であり,重篤な副作用はなかった.ピタバスタチンは優れた脂質改善作用を有し,CYPの関与する薬物相互作用を起こしにくいスタチンとして,高コレステロール血症の治療に十分貢献できるものと期待される.
原著
  • 内田 勝幸, 中島 学, 小金井 恵, 山地 健人
    2004 年 123 巻 5 号 p. 363-371
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/04/27
    ジャーナル フリー
    オキシブチニンは神経因性膀胱治療薬として広く臨床で用いられており,in vitroの検討で抗コリン作用を持つことが明らかになっている.オキシブチニンの代謝物である4-ethylamino-2-butynyl(2-cyclohexyl-2-phenyl) glycolate(N-desethyloxybutynin: DEOB)も同様な作用を持つことが知られているが,in situでの効果については明らかでない.そこで,麻酔下イヌを用いアセチルコリンによる膀胱収縮に対する作用についてオキシブチニンの作用と比較検討した.アセチルコリンの動脈内投与は用量依存的に(3~300 µg/body)膀胱内圧を上昇させた.DEOBの静脈内前投与はアセチルコリンによる膀胱内圧の上昇を用量依存的に抑制した.オキシブチニンも同様な抑制作用を示した.各用量における用量反応曲線から5 cmH2Oの膀胱内圧上昇を引き起こすアセチルコリン濃度を算出した.SchildプロットからDEOBおよびオキシブチニンの傾きを求めたところそれぞれ0.78(95%信頼区間0.45~1.11)および1.49(0.91~2.08)であった.また,アセチルコリンの用量反応曲線を2倍だけ高濃度側に移動させるのに必要なDEOBおよびオキシブチニンの用量はそれぞれ6.4 µg/kg(95%信頼区間1.7~12.8 µg/kg)および13.9 µg/kg(6.3~24.5 µg/kg)であった.以上のことからDEOBはオキシブチニンと同様に麻酔下イヌの膀胱においても抗ムスカリン作用を示し,その作用はオキシブチニンとほぼ同等もしくはやや強いと推察された.また,DEOBはオキシブチニンの治療効果に重要な役割を果たしていると考えられた.
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