日本薬理学雑誌
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ミニ総説「新しい薬理学的標的としてのレニン・アンジオテンシン系」
心筋梗塞後の不整脈とアンジオテンシンII
金 徳男高井 真司岡本 由記子村松 理子宮崎 瑞夫
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2004 年 124 巻 2 号 p. 77-82

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抄録
肥満細胞由来のキマーゼが心血管組織局所のアンジオテンシン(A)II産生において非常に重要な役割を果たしている.例えば,ヒト心臓組織ホモジネートでは総AII産生の8割以上がキマーゼに依存するとも言われている.本研究で,筆者らは心筋梗塞後のキマーゼの役割をヒトと同様のACEとキマーゼの両方のAII産生経路を持つハムスターとイヌの心筋梗塞モデルを用いて検討した.心筋梗塞後のハムスターにおいて,心臓組織のACEとキマーゼの活性化が認められたが,キマーゼの活性化はACEより早期で,かつより持続した.本モデルの生存率と心機能は,キマーゼ特異的な阻害薬の投与によって有意に改善され,その程度はAII受容体拮抗薬を投与した場合とほぼ同程度であったが,ACE阻害薬では有意な改善を認めなかった.イヌ心筋梗塞モデルにおいては,キマーゼ阻害薬は梗塞後の血中AII濃度の上昇とそれに伴う心室性不整脈の発生率に対して有意で顕著な抑制効果を認めた.この程度もAII受容体拮抗薬とほぼ同等であった.これらのことから,心筋梗塞後の病態生理においてはキマーゼの活性化によるAII産生過剰が非常に重要な役割を果たしていることが示され,キマーゼ阻害薬は抗不整脈効果により心筋梗塞後の急性期生存率の改善に寄与することが示唆された.
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© 2004 公益社団法人 日本薬理学会
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