日本薬理学雑誌
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原著
イヌカラマツエキスの抗アレルギー作用ならびにアトピー性皮膚炎に対する有効性の検討
平澤 康史小里 一友山田 貴男大津 尚子松井 ゆかり三輪 洋司岩崎 栄清水 雅良久木 浩平肥後 正一
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2004 年 124 巻 4 号 p. 271-283

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抄録
イヌカラマツエキスについて,in vitro試験による抗菌作用,抗炎症作用およびヒスタミン遊離阻害作用を検証した.更に,アトピー性皮膚炎モデルマウス(NCマウス)を用いて皮膚炎に対する有効性およびミニブタを用いて角質水分量および経表皮水分蒸発量に対する作用についても検討し,以下の結果を得た.抗菌活性に対する検討では,イヌカラマツエキスは抽出温度および抽出条件が変化してもStaphylococcus aureus,Candida albicansおよびStreptococcus pyogenesに対する抗菌活性を示した.ヒアルロニダーゼ阻害活性に対する検討では,イヌカラマツエキスの最終濃度2 mg/mLで有意にヒアルロニダーゼ活性を阻害し,ヒスタミン遊離阻害に対する検討では,イヌカラマツエキス0.005,0.05および0.5 mg/mLで,いずれも有意にヒスタミン遊離を阻害した.アトピー性皮膚炎誘発マウスに対する検討では,イヌカラマツエキス4および400 mg/mLの28日間経皮投与により体重に影響を与えず,皮膚炎スコアの増悪を有意に抑制した.ブタ背部皮膚の角質水分量・経表皮水分蒸発量に対する検討では,イヌカラマツエキスの4および400 mg/mL経皮投与で,投与日数の経過とともに角質水分量が有意に増加し,経表皮水分蒸発量に変化は認められなかった.以上のことから,イヌカラマツエキスは菌の増殖を抑制し,抗原の侵入により生ずる炎症反応を抑制することが明らかとなった.さらに,皮膚の保湿性を上げ,アトピー性皮膚炎の予防および治療に有効な薬剤の一つになり得ることが示唆された.
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© 2004 公益社団法人 日本薬理学会
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