日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
長時間作用型吸入抗コリン薬(COPD治療薬),臭化チオトロピウム水和物(スピリーバ®)の薬理学的特性および臨床効果
大村 剛史西川 英一
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2005 年 125 巻 5 号 p. 307-313

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抄録
臭化チオトロピウム水和物は,慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬として開発された1日1回投与が可能な長時間作用型の抗コリン作用性の気管支拡張剤である.臭化チオトロピウム水和物はムスカリン受容体サブタイプ(M1,M2,M3)に対し,同程度の親和性で結合はするものの,M2受容体に比べ,M1およびM3受容体からの解離が遅い.このことから,kineticsの面では,類薬(臭化イプラトロピウム,臭化オキシトロピウム)と比較して,M1およびM3受容体(特にM3受容体)に高い選択性を示すという特徴が,受容体結合実験ならびに気管標本における収縮実験において示されている.モルモットやイヌを用いたin vivoモデルにおいても,アセチルコリン誘発気管支収縮に対して臭化チオトロピウム水和物は,臭化イプラトロピウムや臭化オキシトロピウムと比べて強力な気管支拡張作用を示すとともに作用持続性でも優れていることが明らかとなっている.欧米および国内で行なわれた臨床試験で,臭化チオトロピウム粉末吸入剤18 µg 1日1回の吸入は1秒量(FEV1)のトラフ値やピークフロー値,呼吸困難をプラセボや臭化イプラトロピウム,臭化オキシトロピウムよりも有意に改善し,QOLの改善やCOPD急性増悪の減少も認められた.さらに,長時間作用型β2刺激薬であるキシナホ酸サルメテロールとの比較試験においても優れた有効性が認められている.以上のことから,臭化チオトロピウム水和物はCOPDにおける呼吸困難などの諸症状の緩解,ならびに運動能力の向上,QOLの改善,急性増悪の予防などを目的としたCOPDの定期的治療に用いられる薬剤として,COPD治療の第一選択薬になると考えられる.
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© 2005 公益社団法人 日本薬理学会
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